インターネットサービスプロバイダーのインターリンクが「コーポレートサイトからHTMLを捨てる」と発表したと報じられている。エイプリルフールの冗談に聞こえるが、同社は「エイプリルフールではない」と明言しているとされる。HTMLファイルを削除し、Markdownファイル中心の構成に全面移行するという内容で、目的はAIエージェントにとって読みやすいサイト構造の実現。Webサイトの「読み手」が人間からAIに広がりつつある今、この動きはサイト運営者全員が注視すべき先行事例になった。
- インターリンクが公式サイトのHTMLをMarkdownファイルに置き換え、AIエージェント向けに最適化したとされる
- AIが情報を取得しやすいllms.txtファイルとJSON APIを新たに設置・公開したと報告されている
- 人間向けにはURLに「?view」を付けるとHTML表示に変換されるビューアを用意していると説明されている
インターリンクが公式サイトをMarkdown形式に移行した背景
インターリンクは、法人・個人向けにインターネット接続サービスを提供する老舗ISP。固定IPアドレスやVPN接続といったニッチな分野で知られる企業とされる 株式会社インターリンク 公式サイト。
そのインターリンクが先ごろ発表したとされるのが、コーポレートサイトのMarkdownファイルへの全面移行。従来のHTMLファイルを削除し、サイト全体をMarkdown形式のファイルで構成し直すという大胆な施策だった。
移行の動機について、同社は「近年のチャットAIの普及により、ユーザーがAIに情報収集を委ねる機会が増えている」と説明しているとされる。ChatGPTをはじめとするAIアシスタントの浸透で、企業サイトの情報を直接読むのは人間だけではなくなった。AIエージェントが企業情報を自動で読み取り、ユーザーに要約して伝える——そんな利用形態が急速に広がっている現状への対応という位置づけになる。
発表時期がエイプリルフールと重なったため、「また今年もエイプリルフールのネタか」と受け取った人も少なくなかったとされる。しかし同社は公式に「エイプリルフールではない」と強調しており、実際にサイトの移行作業は完了済みと報じられている。同時期には「今の生成AIサービスが開発ツールを完成させた」というエイプリルフール向けの発信も別途行っており、コーポレートサイトの変更とジョーク企画は明確に区別されていたとの報告がある。
つまり、これは本気の経営判断とみなせる。「人間向けWebサイト」という考え方そのものを見直す動きの第一歩と言える。
これまでWebサイトは人間が読むことを前提に設計されてきた。しかしAIエージェントによる情報抽出が日常化した現在、HTMLという表現層の重さがむしろ機械可読性の障害になり始めている——インターリンクがコーポレートサイト移行で示した問題提起の核はここにある。
Markdown移行の具体的な仕組み——llms.txt・JSON API・ビューア
では、具体的にサイトはどう変わったのか。技術面の変更を整理してみよう。
| 変更カテゴリ | 変更前 | 変更後 | 影響度 |
|---|---|---|---|
| ファイル形式 | HTMLファイル | Markdownファイル | 大 |
| AI向け案内 | なし | llms.txt設置 | 大 |
| 機械向け窓口 | なし | JSON API公開 | 中 |
| 人間向け表示 | HTML直接表示 | ?viewパラメータで変換表示 | 大 |
| 申し込み画面等 | HTML | HTML(未移行) | 小 |
影響度「大」の変更が3項目ある。特にファイル形式の変更とllms.txtの設置は、Web業界全体への問題提起という意味で注目に値する。
Markdownは「#」で見出し、「*」で強調など、シンプルな記号でテキストを構造化する記法。HTMLのようにタグで囲む必要がなく、人間が読んでも理解しやすい。同時に、生成AIやAIエージェントにとっても、余計なマークアップを解析するコストがかからず情報を抽出しやすい形式として知られている。Markdownの標準仕様は CommonMark Spec 公式仕様 に明文化されており、GitHub Flavored Markdownもこの仕様を拡張する形で定義されている。
llms.txtとは何か
今回の移行でとりわけ興味深いのが、llms.txtの設置。これはWebサイトのルートディレクトリに配置するテキストファイルで、AIエージェントに「このサイトにはどんな情報があるか」を案内する役割を持つ。
イメージとしては、検索エンジンのクローラー向けに設置するrobots.txtのAI版と考えるとわかりやすい。robots.txtがクローラーに「どのページを巡回してよいか」を指示するのに対し、llms.txtはLLM(大規模言語モデル)に「どのページにどんな情報があるか」を伝える仕組み。robots.txt自体は RFC 9309: Robots Exclusion Protocol (IETF) として標準化されている長寿命の規格で、llms.txtはその思想をAI時代に拡張した位置づけになる。
llms.txtの仕様はAnswer.AIの創設者が提唱したものとされ、Markdown形式で記述する。サイト名、概要、各ページへのリンクと説明を構造化して並べることで、AIエージェントが効率的にサイト全体の情報を把握できるようになる。公式仕様は llms.txt 公式仕様 (llmstxt.org) で公開されている。
具体的な記述例は次のようになる。サイトルートの /llms.txt に以下のようなテキストを置く構造だ。
# サイト名 > サイトの簡単な概要を1行で記述する。 ## 主要なドキュメント - [サービス紹介](https://example.com/service.md): サービスの概要説明 - [料金プラン](https://example.com/pricing.md): 料金体系と契約形態 - [FAQ](https://example.com/faq.md): よくある質問と回答 ## オプション - [運営会社](https://example.com/company.md): 会社情報と沿革
「#」で始まる行が見出し、「>」が引用、「-」がリスト項目というMarkdownの基本記法をそのまま使う。AIエージェントはこの構造を解析して、サイト全体のマップを高速に把握できる仕組みだ。
インターリンクはこのllms.txtに加えて、JSON APIも公開したと報告されている。コンピュータがコピー・解析しやすい形式でサイト情報を提供する仕組み。llms.txtが「案内板」なら、JSON APIは「データの受け渡し窓口」にあたる。
llms.txt と robots.txt・sitemap.xml の役割対比
サイトのルートに設置する機械可読ファイルは llms.txt の他に robots.txt と sitemap.xml が代表的だ。役割を整理すると次のようになる。
| ファイル | 主な対象 | 目的 | 形式 | 標準化 |
|---|---|---|---|---|
| robots.txt | 検索クローラー | 巡回許可・禁止の指示 | 独自テキスト | RFC 9309 (IETF) |
| sitemap.xml | 検索クローラー | ページ一覧と更新日の提示 | XML | sitemaps.org 0.9 |
| llms.txt | LLM・AIエージェント | サイト構造の案内と要約 | Markdown | llmstxt.org 提案仕様 |
| JSON API | 各種プログラム | 構造化データの直接取得 | JSON | 各社独自設計 |
3種のファイルは排他的ではなく併用が前提。robots.txtとsitemap.xmlは検索エンジンのクローラー制御用、llms.txtはAIエージェントの情報抽出用、JSON APIは機械処理用——それぞれが異なる読み手を想定している。インターリンクはこの3層をすべて整備し直したことになる。
人間向けビューアの仕組み
「Markdownに移行したら、普通にブラウザで見られなくなるのでは?」——当然の疑問だろう。
インターリンクはこの問題を?viewパラメータで解決したと報告されている。サイトURLの末尾に「?view」を付けると、MarkdownファイルをHTMLに変換して読みやすいレイアウトで表示するビューアが動作する。人間がブラウザでアクセスする際は、このビュー表示を使えば従来と同じ感覚で閲覧できる仕組みだ。
ただし、申し込み画面やメンテナンス・障害情報など、人間の操作が前提となるページや重要性が高いページについてはMarkdownに移行していないとのこと。今後、安全性を確認しながら段階的に移行を進めるとされる。
同社は将来的に「WebブラウザにもMarkdownファイルの表示機能が搭載される」と予測しており、?viewのような変換レイヤーがいずれ不要になる時代を見据えているとされる。
SEOからAIOへ——Webサイト設計はどう変わるのか
インターリンクの事例は一企業の施策にとどまらず、Webサイト設計の考え方そのものに一石を投じた。キーワードは「AIO」——AI Optimization、つまりAI向け最適化という方針だ。
これまでWebサイトの設計で最重視されてきたのはSEO(Search Engine Optimization)。Googleの検索アルゴリズムに評価されるよう、メタ情報を整え、構造化データを埋め込み、コンテンツの質を高める——そんな取り組みが20年以上続いてきた。構造化データの標準は schema.org 公式仕様 としてGoogle・Microsoft・Yahoo・Yandexが共同で策定している。
しかし近年、状況は明らかに変化している。GoogleのAI Overviewsが検索結果の冒頭にAI生成の要約を表示し、PerplexityやChatGPTの検索機能がWebサイトの情報を独自に読み取って回答を生成するようになった。Google自身もAI Overviewsの挙動と推奨実装を Google Search Central: AI Overviews で公開しており、構造化データの整備と一次情報の明示が引用採用率に影響するとされる。ユーザーがサイトを直接訪れず、AIを介して情報を得るケースが無視できない割合に達していると報告されている。
こうした変化の中で「AIにとって読みやすいサイト構造」を意識する必要が生まれた。具体的には以下のような方向性が見えてくる。
- 構造化データの強化: schema.orgなどの構造化マークアップを充実させ、AIが文脈を正確に理解できるようにする
- llms.txtの設置: サイトの全体像をAIに案内するファイルを用意する
- Markdown / プレーンテキストの併用: HTML以外の形式でもコンテンツを提供する
- JSON APIの公開: プログラムから直接データを取得できる窓口を設ける
もちろん、すべてのサイトがインターリンクのようにHTMLを全廃する必要はない。そもそもHTMLはブラウザの標準言語であり、CSSやJavaScriptとの連携によるリッチな表現力は依然として大きな価値がある。
重要なのは「人間だけを想定したサイト設計」から「人間とAIの両方を想定したサイト設計」への発想転換。SEOとAIOは排他的な関係ではなく、両立すべきものになっていく。
一般サイト運営者が今できること
「うちのサイトもMarkdownに移行すべきか?」と焦る必要はない。ただし、今すぐ低コストで取り組める施策はいくつかある。
llms.txtの設置が最も手軽な第一歩。自サイトのルートに、サイトの概要・主要ページのURL・各ページの説明をMarkdown形式で記述したllms.txtを配置するだけで対応できる。WordPressサイトであれば、テーマのルートディレクトリにテキストファイルを1つ追加すれば済む作業だ。
次に有効なのが、既存の構造化データの見直し。FAQ、HowTo、Articleなどのschema.orgマークアップを正確に実装しているか確認してみてほしい。AIがサイト情報を引用する際、構造化データの有無と正確さが採用率に影響するとされる。
また、ローカル環境でLLMを動かしてWebデータを処理する需要も拡大している。AIが読み取りやすいサイト構造を意識することは、こうした新しい利用シーンへの対応にもつながる。たとえばローカルLLMの処理性能については、GPUのVRAM容量がボトルネックになることが多く、RTX 4070 Super vs RTX 5060 Ti 16GBのVRAM比較記事では当サイトの実機検証データを紹介しているので参考にしてほしい(i7-14700F + DDR5 96GB の構成で計測)。
対応が有効なケース
– コーポレートサイトや製品サイトで、AIアシスタント経由の情報取得を促進したい場合
– ブログやメディアサイトで、AI検索エンジンからの引用・参照を増やしたい場合
– 技術ドキュメントを運営しており、AIコーディングツールからの参照を想定する場合
急ぐ必要がないケース
– ECサイトなど、購入・申し込みの導線が主目的のサイト(UIの魅力が成果に直結するため)
– 会員制サイトなど、そもそも外部AIにコンテンツを読み取らせたくない場合
llms.txt 設置の具体的な手順
llms.txt の設置は手作業でも30分程度で完了する。WordPressを想定した最小手順は次のとおり。
- テキストエディタで
llms.txtという名前のファイルを新規作成する - 1行目に
# サイト名を書く(H1見出しは1つだけ) - 続いて引用記号
>で1〜2行の概要を書く ## 主要ページ見出しの下に- [見出し名](URL): 説明形式でリンクを並べる- 必要に応じて
## オプションセクションで補助的なリンクを足す - FTPやファイルマネージャでサイトのルートディレクトリ(
https://example.com/llms.txtでアクセスできる位置)にアップロードする - ブラウザで実際にアクセスしてプレーンテキストが表示されることを確認する
サーバーでMIMEタイプの設定が必要な場合は .htaccess に AddType text/plain .txt を加える。WordPressの場合、テーマファイルではなく public_html 直下に置くのがポイント。テーマフォルダ内に置くとURLパスが変わってAIクローラーが見つけられないことがある。
設置後の確認方法も用意されている。https://example.com/llms.txt を直接ブラウザで開き、Markdownのソースがそのまま表示されれば成功。サーバーがMarkdownをHTMLにレンダリングしようとしない設定(プレーンテキスト配信)になっていることも合わせてチェックすると安心だ。
まとめ
インターリンクの「コーポレートサイトMarkdown化」は、一見すると極端な施策に見える。しかし、その本質は「Webサイトの読み手がAIに広がった」という現実への正面からの対応と読み取れる。
サイト運営者として押さえておくべきポイントは3つ。llms.txtという新しい標準が登場していること。SEOに加えてAIO(AI向け最適化)という視点が求められ始めていること。そして、全面移行は不要でも「AIにも読みやすいサイト」を意識した小さな改善は今日から始められるということ。
HTMLを全廃するかどうかは各社の判断に委ねられるが、「人間だけに向けて書く時代」は終わりに向かっていると言える。自分のサイトにllms.txtを1ファイル追加するところから、AI時代のWeb最適化を始めてみてはどうだろうか。
出典・参考
- 株式会社インターリンク 公式サイト — Markdown化宣言の一次ソース
- interlink.or.jp/company/philosophy.md — AI-First宣言(公式Markdown全文)
- ITmedia AI+「人間向けWebサイトやめます」 — 主要メディア報道
- llms.txt 公式仕様 (llmstxt.org) — llms.txt仕様の一次ソース
- RFC 9309: Robots Exclusion Protocol (IETF) — robots.txt標準化文書
- schema.org 公式仕様 — 構造化データの共同策定仕様
- CommonMark Spec 公式仕様 — Markdownの標準仕様
- Google Search Central: AI Overviews — GoogleによるAI要約機能の公式ドキュメント
よくある質問(FAQ)
Q: Markdownとは何ですか?
Markdownは、テキストに簡易な記号を加えて見出しやリスト、強調などの構造を表現する記法。たとえば「# 見出し」「太字」のように書く。HTMLより記述がシンプルで、人間にもAIにも読みやすい点が特徴。GitHubのREADMEやブログの執筆ツールなど、幅広い場面で使われている。
Q: llms.txtは自分のサイトにも設置できますか?
設置できる。自サイトのルートディレクトリ(トップページと同じ階層)に、Markdown形式でサイトの概要と主要ページの情報をまとめたテキストファイルを「llms.txt」というファイル名で配置すればよい。特別なサーバー設定や有料ツールは不要で、テキストエディタがあれば作成可能。
Q: インターリンクのサイトは人間でも普通に見られますか?
見られると報告されている。URLの末尾に「?view」を付けることで、Markdownファイルを人間が読みやすい形式に変換するビューアが動作する。ただし申し込み画面など一部のページは従来のHTML形式のまま残されており、段階的に移行を進めている状況とされる。
Q: SEO対策をしていればAIO対策は不要ですか?
不要ではない。SEOとAIOは重なる部分が多いものの、目的の読み手と評価軸が異なる。SEOは検索エンジンのアルゴリズムによるランキング上昇が目的、AIOはAIエージェントによる引用・参照採用が目的になる。schema.org構造化データの整備は両方に効くが、llms.txtの設置やMarkdown形式での提供はAIO寄りの施策。両者を併用するのが現状の最適解と言える。
Q: llms.txtを設置するとGoogleの検索順位は下がりますか?
下がらない。llms.txtはAIエージェント向けの追加ファイルであり、検索エンジンのランキング要素には直接影響しない。robots.txtやsitemap.xmlと同じく、サイトのルートに1ファイル追加する形になるため、既存のSEO対策と競合せず併用できる。
本記事は AIツール図鑑編集部 が記載時点の情報をもとに執筆。製品アップデートや第三者ベンチマーク・価格・対応ランタイム等の変動で評価が変わる可能性がある。一定期間経過した内容は再検証を推奨する。


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