2026年4月、AI音楽生成ツールSunoがv5.5をリリースした。今回のアップデートで最も注目すべきポイントは、音質の改善ではない。ユーザーが「どんな音楽を作るか」をコントロールできる、カスタマイズ機能の大幅強化だ。
これまでのSunoは、プロンプトを入力して生成ボタンを押すと、AIが解釈した結果がランダムに出てくる仕組みだった。気に入る曲が出るまで何度もガチャを回す——そんな体験に不満を感じていたユーザーは少なくないはず。v5.5では、声質を指定する「Voices」、好みを学習させる「My Taste」、独自のスタイルモデルを構築する「Custom Models」の3機能が追加され、AI音楽生成の体験そのものが変わった。
・Suno v5.5は音質ではなくカスタマイズ性を強化した大型アップデート
・新機能はVoices(声質指定)・My Taste(好み学習)・Custom Models(スタイル学習)の3つ
・無料プランでも基本機能は利用可能だが、フル活用にはProプラン以上が必要
Suno v5.5とは?アップデートの全体像
Suno v5.5は、Sunoが公式に「過去最大級のアップデートの一つ」と位置づけたバージョン。2026年4月にリリースされた。
過去のメジャーアップデートを振り返ると、方向性の変化がよくわかる。v4では音声のリアリティ向上が中心テーマだった。v5ではボーカルの自然さが改善され、「AIっぽい」と感じる違和感がかなり減った。そしてv5.5で、ついに「音質」から「制御性」へと開発の軸足が移った。
この方向転換には背景がある。AI音楽生成市場は2025年後半から急速に競争が激化し、Udio、Googleの「Lyria 3 Pro」など強力な競合が次々と登場している。音質面での差別化が難しくなる中、Sunoが選んだ戦略は「ユーザーが思い通りの音楽を作れるツール」になること。生成AIの進化段階として、「とにかく生成できる」フェーズから「意図した通りに生成できる」フェーズへの移行と捉えると、v5.5の意味が見えてくる。
対象プラットフォームはWeb版・モバイルアプリの両方。既存ユーザーは特別な操作なしで新機能にアクセスできる。
3つの新機能を詳しく解説|Voices・My Taste・Custom Models
v5.5の核となるのは3つの新機能。それぞれ単体でも便利だが、3つを組み合わせることで「自分だけの音楽スタイル」を構築できる点が最大の特徴。
| 変更カテゴリ | 変更前(v5以前) | 変更後(v5.5) | 影響度 |
|---|---|---|---|
| 声質の指定 | 毎回ランダムで声質が変わる | Voicesで特定の声質を選択・固定可能 | 大 |
| 好みの反映 | プロンプトのみで方向性を指定 | My Tasteがユーザーの嗜好を自動学習 | 大 |
| スタイルの再現 | ジャンル指定(テキスト)のみ | Custom Modelsで独自のスタイルモデルを構築 | 大 |
| 音質 | v5レベル | v5と同等(音質向上は今回のフォーカス外) | 小 |
表を見ると影響度「大」が3つ並んでいるが、これは誇張ではない。いずれもAI音楽生成の「ランダム性」という根本課題に対処する機能であり、使い方が根本から変わる可能性がある。
Voices——声質を指定してブレをなくす
Sunoでの楽曲生成で最も困っていた人が多いのが、ボーカルの声質問題だろう。同じプロンプトで生成しても、毎回まったく違う声質が出てくる。シリーズもので複数曲を作りたいとき、声質がバラバラになるのは致命的だった。
Voicesはこの課題を直接解決する機能。あらかじめ用意された声質ライブラリから好みの声を選び、生成時に指定できる仕組みになっている。一度気に入った声質を見つければ、以降の生成ではその声で統一可能。
実用面で特に効果が大きいのは、YouTube向けのBGM付きナレーション制作や、シリーズコンテンツの音楽制作。声の一貫性が担保されるだけで、作品としてのクオリティが一段上がる。
My Taste——好みを学習させて精度を上げる
My Tasteは、ユーザーの音楽的嗜好をAIが学習する機能。使い方はシンプルで、生成された楽曲に対してフィードバック(好き・嫌い等)を繰り返すことで、AIがユーザーの好みのパターンを把握していく。
従来はプロンプトの書き方に習熟しないと理想の楽曲に近づけなかった。「もう少しドラムを控えめに」「コード進行をジャジーに」といった細かいニュアンスをテキストで伝えるのは、音楽の専門知識がない人にはハードルが高い。My Tasteなら、言語化が難しい好みでも「この曲は好き」「これは違う」というシンプルな操作で伝えられる。
回を重ねるごとに生成精度が上がるため、長く使い続けるほど「自分専用のAI作曲家」に育っていく。Spotifyのレコメンドアルゴリズムを、音楽生成側に応用したと考えるとイメージしやすいかもしれない。
Custom Models——自分だけの音楽モデルを作る
3つの新機能の中で最もパワフルなのがCustom Models。特定のジャンル、雰囲気、楽器構成などを学習させた専用の音楽モデルを自分で構築できる。
たとえば「90年代のローファイヒップホップ」に特化したモデルや、「北欧メタル風のインスト」に特化したモデルを作れる。一度モデルを構築すれば、以降はそのスタイルの楽曲を安定して量産可能になる。
この機能は、プロ・セミプロのクリエイターにとって特に価値が高い。動画制作者が自分のチャンネル用BGMの統一感を保ちたいとき、ゲーム開発者が特定の世界観に合った音楽を大量に必要とするとき——こうした「同じ方向性の楽曲を繰り返し生成する」ユースケースで真価を発揮する。
ただしCustom Modelsは上位プラン向けの機能という位置づけ。無料プランでは利用に制限がある点は注意が必要。
AI音楽生成は”ガチャ”から”創作ツール”へ——v5.5が示す方向性
ここまでv5.5の新機能を見てきたが、個別の機能以上に重要なのは、この方向転換が持つ意味だ。
AI音楽生成は長らく「ガチャ」に例えられてきた。プロンプトを入力して、出てきた結果が気に入ればラッキー。気に入らなければもう一度回す。この体験は面白い半面、「道具として使えるか」と問われると答えに詰まる場面が多かった。
v5.5のVoices・My Taste・Custom Modelsは、この「ガチャ」構造を「創作ツール」に変えるための布石と読める。声質を選び、好みを学習させ、スタイルモデルを構築する——この3ステップを経ることで、ユーザーは「AIに任せる」から「AIを使いこなす」側に移行できる。
一方で、冷静な視点も必要だろう。AI業界では新機能がリリースされるたびに過度な期待が膨らみ、実際に使ってみると「思ったほどではなかった」というサイクルが繰り返されてきた。Suno v5.5も、リリース直後の評判だけで判断するのは早計。実際にVoicesで声質を固定して曲を作ってみる、My Tasteのフィードバックを10回以上繰り返してみる——そこまでやって初めて、v5.5の真価がわかるはずだ。
競合のUdioも2026年に入ってから積極的にアップデートを重ねており、Googleが発表したLyria 3 Proも存在感を増している。AI音楽生成ツールの比較については別記事で詳しく扱っているので、そちらも参考にしてほしい。AI音楽に限らず、Liquid AIのLFM2.5-350Mのような軽量モデルなど、AIモデル全般で「ユーザーの制御性を高める」方向への進化が加速している。
旧バージョンからの変更点と注意事項
v5.5へのアップデートに伴い、既存ユーザーが把握しておくべきポイントを整理した。
まず、v5以前に生成した楽曲やプロジェクトはそのまま残る。過去のデータが消えることはないので、その点は安心してほしい。
ただし、UIの変更は発生している。生成画面にVoicesの選択パネルが追加され、レイアウトが従来と異なる。慣れるまで「生成ボタンの位置が変わった」と戸惑う人もいるだろう。
対応が必要なケース
– シリーズもので声質の統一が必要な人:Voicesで声質を固定し、既存曲との整合性を確認する
– APIを使って自動生成している人:新パラメータ(voice_id等)が追加された可能性があるため、API仕様の確認が必要
– 複数プロジェクトを並行管理している人:Custom Modelsでプロジェクトごとにスタイルを分離すると管理が楽になる
対応不要なケース
– 単発で曲を生成して楽しんでいるだけの人:従来通りプロンプト入力→生成の流れで問題なし
– 無料プランで試しに使っている段階の人:基本機能はそのまま利用できる
アップデート手順と始め方
Suno v5.5はWeb版で自動適用されるため、特別なアップデート操作は不要。ブラウザでSunoにアクセスすれば、すでにv5.5の機能が利用可能な状態になっている。
新機能を使い始める手順は以下の通り。
- Suno公式サイト(suno.com)にログインする
- 生成画面で「Voices」タブが追加されているのを確認する
- 好みの声質を選択してから、通常通りプロンプトを入力して生成する
- 生成結果に対してフィードバックを行い、My Tasteの学習を始める
- Proプラン以上のユーザーは「Custom Models」セクションからスタイルモデルの構築に着手する
モバイルアプリの場合は、アプリストアで最新版にアップデートすれば反映される。自動更新をオフにしている人は手動更新を忘れずに。
まとめ
Suno v5.5は「音質」ではなく「制御性」を強化した、方向転換とも言えるアップデートだった。Voices・My Taste・Custom Modelsの3機能により、AI音楽生成は「ランダムな出力を待つ体験」から「意図した音楽を作り込む体験」に変わりつつある。
すぐに試すべき人: シリーズコンテンツ用BGMを作っている人、声質のバラつきにストレスを感じていた人。Voicesだけでも体験が一変する。
様子見でいい人: 無料プランでたまに遊ぶ程度の人。新機能は段階的に試せるので、急ぐ必要はない。
覚えておきたいこと: AI音楽生成ツール全体が「カスタマイズ性」で競い合うフェーズに入った。Suno以外のツールも含め、今後半年で選択肢がさらに増える見通し。自分のワークフローに合うツールを見極めるためにも、v5.5の新機能には一度触れておいて損はない。
よくある質問(FAQ)
Q. Suno v5.5は無料で使えますか?
基本的な楽曲生成とVoicesの一部機能は無料プランでも利用可能。ただし、Custom Modelsの構築やMy Tasteの高度な学習機能はProプラン(月額約10ドル)以上で開放される。1日あたりの生成回数にも無料プランでは制限がある。
Q. Sunoで生成した音楽の著作権はどうなりますか?
無料プランで生成した楽曲は非商用利用のみ。商用利用にはProプラン以上への加入が必要で、加入後は生成楽曲の商用利用権が付与される。ただし、他アーティストの楽曲を模倣する形での生成は利用規約で制限されているため、プロンプトに実在のアーティスト名を含める際は規約を確認してほしい。
Q. Suno v5.5はスマホからも使えますか?
iOS・Androidともに対応している。アプリを最新版にアップデートすれば、Web版と同様にv5.5の新機能を利用できる。ただし、Custom Modelsの構築など複雑な操作はPC版のほうがやりやすい。


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